ニュースリリース

今、考えたい原発事故の影響〜主として健康面について〜
たんすサロン講演報告

平成23年12月2日、午後1時〜3時に、牛込箪笥地域センターで開催された第29回たんすサロンにおいて、標記の講演がありました。主催は同センターの管理運営委員会、講師は甲良町町会長・新宿区町会連合会理事・山中技術研究所所長の甲野啓一さんです。

甲野会長
受講者

講演では、地域の皆様が「自分が受ける放射線量を定量的に知り、その影響を判断する」ためには、どのように考えたらよいのかを、具体的な数値を引用して説明がありました。

講演のあと、質問時間を1時間と長くとり、出席者、特にお母さん方の「自分たち、そして子供や孫に悪影響はないか」という不安に、なるべく詳しくお答えするようにしました。

また、新宿区から借用した放射線測定器の指示値を読み取り、会場でも約0.05マイクロシーベルト/時の自然放射線量率があること、持参したピーマン等の野菜の表面を測定して異常がないことなどを、出席者の皆様に見ていただいています。なお追補として、講師が福島第一原発近辺の警戒地域(立入禁止区域)居住者の一時帰宅における安全管理者を担当した、被災地支援ボランティア活動の報告がありました。講演の内容は、「箪笥地区」欄に記載したテキストをご覧下さい。

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講演に対し、多数の活発な質疑応答がありましたが、主なものを紹介します。

Q1.食品に含まれる放射能(放射性物質)濃度の検出値が続々と報道されていますが、大丈夫でしょうか。特に子供や孫への悪影響が心配です。

A1.(1)もちろん絶対安全ということは世の中になく、不安があり、警戒するのは当然です。私も心配ですが、講演で述べましたように(テキスト参照)、「人体には、少量の放射線を浴びても健全体に戻る復元力がある」という医学的知見に基づいて、あまり恐れすぎないようにしています。

(2)政府が発表している、食品中放射性物質濃度の暫定値により受ける年間放射線量の1ミリシーベルトとか20ミリシーベルト(この数値は検討中で確定的ではありませんが)では、健康にも遺伝にも悪影響はないと思っています。これら一連の、政府が示す数値の根拠は、国際放射線防護委員会で、最も信頼できるとされている専門家が、出来る限りの審議を重ねて決定した勧告に基づくものですから、私たちとしては、専門家の良心に頼るより他はないと思います。

(3)放射線に対する人体の復元力については、テキストを読み返していただきたいのですが、ここでは食品の例について説明します。人体にとって必須の栄養素であるカリウムには、自然放射性物質のカリウム40が約0.1%含まれています。このカリウムや、同じく自然放射性物質である炭素14などを摂取・排泄している人体内には、体重60kgの人で約7000ベクレルの自然放射性物質が常時存在しています。

つまり私たちは、1kgあたり約110ベクレルを含有する「放射能人間」でありながら、人類発生以来、この自然放射線(食品以外に、宇宙線、大地、大気からも受けています)と共存して生き続けて来たという事実を認識してよいと思います。

質疑応答

Q2.チェルノビリ事故のように、小児のがんが増えないでしょうか。

A2.もちろんリスクはゼロではありませんが、チェルノビリより危険は少ないだろうと思います。理由は次の通りです。

(1)チェルノビリ事故では、当局の危険周知・警告が不十分だったため、周辺住民は危険と知らされずに汚染食品を摂取、特に放射性ヨウ素で汚染された牛乳を飲み続けた結果、小児の甲状腺がんが多数発生(そのデータは公表されていないようですが)したとされています。

福島第一原発事故の場合は、最初から食品の危険が公表され,住民も警戒しています。避難する際に、汚染された沢の水を飲んだケースも考えられますが、一時的なものであり、汚染牛乳を飲み続けたチェルノビリの場合に比べれば、摂取量は少ないと思います。

福島県などの行政では、小児の甲状腺がん検診等の被害追及を計画していますので、実態は次第に明らかになると思います。とにかく行政が危険を認識し、公表している(まだ不十分だという批判はあるでしょうが)という点で、日本はましな国だと思って下さい。

(2)チェルノビリは内陸部で海藻類の入手が困難なため、住民は慢性的にヨウ素(甲状腺の機能維持に必要な栄養素)不足でした。そこへ汚染牛乳を飲んだため、放射性ヨウ素と天然ヨウ素を区別しない人体は「それ、足りなかったヨウ素が来た」と飛びついて吸収し、放射性ヨウ素が甲状腺に集積して、甲状腺がんの発生率が上昇したと考えられています。

日本人の場合は、ふだんから海苔や昆布を食べて、ヨウ素を摂取している人が多いですから、チェルノビリに比べて危険は少ないだろうという希望的観測もあります。実際にどうなるかは、今後の検診結果追跡で判明するでしょう。

Q3.都内でも放射線量率が高い場所が発見されていますが、危険ではないでしょうか。

A3.測定された放射線量率に滞在時間を掛けて、受ける放射線量を計算し、テキストにある各種の数値と比較して下さい。たとえば20マイクロシーベルト/時(新宿区では今のところ、このような高い値は観測されていないようです)の場所に2時間滞在したとすると、受ける放射線量は40マイクロシーベルト=0.04ミリシーベルトで、1回のX線CT検査で受ける放射線量約6.9ミリシーベルトの約170分の1、年間自然放射線量約1.5ミリシーベルトの約40分の1とごく少なく、心配はないと考えてよいでしょう。

Q4.放射能には、どんな種類があるのですか。いろいろな話を聞いても、釈然としないことが多いのですが。

A4.おっしゃる通り、いろいろな表現が錯綜していますので、いくつかの観点から整理してお答えします。

(1)放射能、すなわち放射性物質の種類は、a)核分裂等で人工的に作られるものが、セシウム137など200種類近く、b)地球内にもともと存在する自然放射性物質がカリウム40など約20種類、c)宇宙線によって作られる自然放射性物質が炭素14など約20種類あります。(注)当日の回答で説明しきれなかった部分を補足しました。

(2)放射線の種類は、発生元となる放射性物質の種類ごとに異なり、次の3種類があります。a)アルファ線:透過力は弱く、紙1枚で止まります。b)ベータ線:アルミの薄板程度で止まります。c)ガンマ線:一般に透過力は最も強いが放射性物質の種類によって強弱があります。たとえばセシウム137からは、主としてガンマ線が発生しています。

(3)一方、セシウム137といった特定の放射性物質に着目した場合には、その1種類だけです。原爆から出たものも、原発から出たものも、同じセシウム137です。

以上
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